2011.12.06 Tuesday


走った。

ひたすらに、走った。

だけど、貴女の姿を見つけることはできなくて、途方にくれる。

そんな時、ふと見上げると貴女が、真っ白な笑顔をこちらに向けていた。

「……!」

必死に名前を読んでいるのに、届かない。

やがて、ゆっくりと背を向けて、

貴女は去っていく。

追いかけようとしても届かない。

身体は動かず、手をどんなに伸ばしても

届かない




「……ロッテ様…!!!!」

気がつくと、見慣れた天井だった。

自分の部屋。

また同じ夢。

「−−−−くそッ…!」


仮面舞踏会から、まだ日は浅く
だけど、あの日から
大きく変わってしまった。

「あなたも 私を檻の中に閉じ込めておきたいの…」

遠のく意識の中で、
だけどはっきりと残っている言葉。

違う…! 僕は、ただ……


舞踏会が終わった頃、僕は離れの物陰から発見された。
眠っていた。

眠って…

あの時、確かにシャルロッテ様を見つけたのに。
僕は……

それから、ヴェラさんからことの顛末を聞いた。

ロンズデール子爵様が、シャルロッテ様に結婚を申し込んだこと。

なぜシャルロッテ様が……


あの日から、変わってしまった。
もう、前までのシャルロッテ様は居ない。

お部屋の花瓶を取り替えても
新しいタオルをお持ちしても
もう
あのお部屋にいらっしゃるのは
そこにいらっしゃるのは
以前までの、あの方ではない……

もう、外へ続く離れの鍵も
意味を持たなくなった。

この鍵は……

繋いでいたものは……
By 近侍・ハリー | Time : 02:41 | CM : 0 | TB : 0
2011.11.20 Sunday


 「今日は、休んでいてもいいんだぞ?」
そう声をかけて下さるスヴェンさんを振り切って、夜には仕事に戻った。

部屋に居ても
歩いていても

あの感覚が消えない。

真っ白な手が
頬にふれ
なぞり
首に……


――一緒にいきましょう、ハリー…


あの綺麗な笑顔が
焼きついて離れない。


振り払うこともできた。
けれど…


僕は、貴女が独りで泣いているのなら
たとえ地獄でも
向かっていけるのに……



「あれ…?」
窓から見下ろすと、そこは薔薇園。
暗闇に紛れて、青い薔薇が咲き誇る……

その中に、動く影……
アレクさん……いや、ノア?

アイツ…こんな時間に何してるんだ?
おかしなヤツ。

気がつけば、いつもどこかに居る。

フン。どうせ、何か小細工でもしてるんだろ?
じゃなかったら……

よーし
来月のパーティーでは、お前なんか、まだまだヒヨッコなんだって
僕が先輩の意地を見せつけてやる!!
見てろよ! ノア!
By 近侍・ハリー | Time : 18:13 | CM : 0 | TB : 0
2011.11.03 Thursday

 
少しだけ隙間の開いたカーテンに手をかけ、ゆっくりとあける。
窓辺に柔らかい光が差して、部屋が明るくなる。

「−−おはようございます、シャルロッテ様。」


ベッドに座る、真っ白なその人が、弱く微笑む。

「おはよう……ハリー……」

まるで、フランスの細工師に作らせた人形のように、繊細で美しい。
柔らかな光は、シャルロッテ様を優しく照らして、より一層、白く輝かせる。


「昨晩はよく眠れましたか?」
そう問うと、ぼんやりとどこか遠くを見つめる。
「きのうはね、満月だったの。
青白い月明かりが、とても綺麗だったわ……

だからね、私、少しだけカーテンをあけておいたの。」

そう言って、ふふっと笑う。


シャルロッテ様がエグレッタ・サクラにいらしてから、暫く経つけれど、ここでの生活もだいぶ慣れたご様子。

それに、今日はお身体の調子も良いみたいだ。

「きっと、あの光に照らされた薔薇たちは、とても綺麗でしょうね…
ねぇ、ハリー?
今度、夜にこっそり薔薇園に行ったら駄目かしら…」

「それは…」

思わず言葉に詰まる。

シャルロッテ様の居る離れは、限られた使用人しか立ち入ることが許されない。
新しく入ってきた使用人は、シャルロッテ様にお目にかかったことなど、ごく僅かだろう。

それと同時に、シャルロッテ様も、ここからそう自由に離れることはできない…
まして夜など…

「…だめよね…」

悲しげに俯く、シャルロッテ様。

ああ…そんなお顔をされないでください。

「…マックス様にお願いしてみましょう」

思わず、そんな言葉が口から漏れる。
けれど、シャルロッテ様は、ぱっと顔をあげ、瞳を輝かせる。
「本当? ハリー!」

「えぇ。誰かが付き添えば、許して下さると思います。
ですから、お一人で出かけては駄目ですよ?」

優しくたしなめると、分かっているわ、と悪戯っぽく微笑む。

貴女様が笑顔で居て下さるのなら、僕は…

その瞳の先に映るのがなんであろうと

貴女様が、孤独で寂しく、涙で頬を濡らさなければいい。

笑って下さるのなら…
僕は…



By 近侍・ハリー | Time : 10:58 | CM : 0 | TB : 0
2010.01.21 Thursday


へぇ〜…
ヌベール・キュイジーヌかぁ。
やるじゃん。

引き篭もってばっかりの
陰険執事の代わりに頑張ってる僕らのために
マックス様がパティシエを呼んでくださったんだ!
流石はマックス様!


まったくさぁ…
いい加減、あの陰険執事も
部屋から出てくればいいんだよっ。
僕たちの仕事が増えて仕方ないじゃないか!

気を遣ってもらってばっかりいないで
マックス様にも気を遣えってもんだよ!


リリィ・テイラーのパーティの料理やデザートも
ヌベール・キュイジーヌが作るんだって?
へぇ…アレクが益々浮かれそうだな。

え?
結婚式の料理?

そ、それは…

う、うるさいなぁ、食べたよ!!
…ちょっと記憶がないだけで…


コーヒーとブランデーの香るケーキ…。
こういう大人なケーキはさ、アレクには似合わないよ
ほら
僕にはぴったり、でしょ?

え?
何さ、何こっそり笑ってるんだよ…!


さて…と

今日の午後の仕事は…
どこへ散歩しに行こうかな…っと…

By 近侍・ハリー | Time : 15:00 | CM : 0 | TB : 0
2010.01.08 Friday


はぁ…

ピンクに覆われた庭を見るとゲンナリするよ
マックス様ってば、本当に何を考えているんだろう…


―リリィ・テイラー 2010 - Be My Valentine

マックス様の机の上に置かれた
封筒に目を落とす


各地から客を招いてのパーティー
華やかな衣装に囲まれて
聖なるバレンタインを祝う――

しかも、同じ歳くらいの
女の子と出かけるだなんて知ったら
あの人はなんて言うのだろう

まぁ…

アレクじゃ、そんな対象にもならないだろうけれど


意外なのが、マックス様が
けっこう乗り気だってこと

パーティーに着ていくアレクの衣装、
今度は マックス様がご自分で
デザインするなんて言い出して…

もちろん作るのはリリィ・テイラー
来週にもスタッフが採寸に来るんだってさ


マックス様ってもしかして…
アレクのこと気に入ってるのかな?


…あ〜〜ぁ、
そんなこと考えてたら、なんだか腹がたってきたっ

今日の午後の仕事は裏庭の散歩にしようかな

うん、陰険執事もいないし…我ながらナイスアイデア。
 
 
By 近侍・ハリー | Time : 13:14 | CM : 0 | TB : 0
2010.01.01 Friday


マックス様…疲れているんですか??

…いえ、リリィ・テイラーのパーティーに
お出かけになるのはわかりますけど…


どうしてお供が僕じゃなくって
庭師のアレクなんですかっ?!

納得できませんっっ!!!!!


まあ、バレンタイン・パーティーの招待状が届いたのなら
しょうがないですけど…


いやっ、

でも!!!

そりゃ同じ女性でも、キレイどころなら
秘書のパトリシアさんがいるじゃないですかっ!!
…そりゃあ、一癖あるけれど…

アレクよりはいいでしょう?!


…冗談は辞めてくださいよ〜〜!!

ホラ、スヴェンさんも!
何とか止めてくださいよ!!



……あああ!
もうホラ、マックス様が変なこと言うからですよっ!

窓の外、見てくださいよ〜〜!!!



―――窓の外 バラ園一面が、

…どんな技術を使ったのかはわからないけれど、

きのう見たはずの景色とは全く違う
エグレッタにはおよそ似つかわしくない、

鮮やかなピンク色 一色に染められているのに僕は驚愕した――
By 近侍・ハリー | Time : 15:09 | CM : 0 | TB : 0
2009.12.21 Monday


はぁ…

もう、うんざりだよ



元気だった頃には、
どこまでも神経質に人の行動を監視していて

少しでも手が空いていようものなら
すぐに仕事を言いつけて

そのくせ仕事の完成度には恥からケチをつけていった癖に…



今や自分の部屋に引きこもったきりで

仕事すらまともにしようとしない。



陰険執事の溜まりに溜まった仕事は
本来 他の人には手が出せない仕事なんだけど

生憎この館にはあいつ以外の執事はいないし

こんな事態に誰の仕事だなんて、
そんなことも言ってられないしね。



あ〜ぁ、

あんな執事をまだ置いておくなんて、
いくら館付きの執事だからって

マックス様も何を考えているんだろう?



マックス様も…

あの結婚式以来、なんだか様子が変わられたけど。


というよりは、「元に戻られた」のかな?


マルグリート様と一緒になってからのマックス様は
やけに派手な服装でお出かけになるし

あの頃の、あの人の前でいるマックス様とはなんだか違ってた。



僕としては、なんだかホッとしたけど…



――あの結婚式から二ヶ月。



もうすぐクリスマスだってのに…

これじゃどうやらのん気にパーティーなんて
している暇もなさそうだ。

By 近侍・ハリー | Time : 13:08 | CM : 0 | TB : 0
2009.10.26 Monday


結婚式が終わり…
また、退屈な日々が戻って来た。

静かにエグレッタ・サクラを去っていかれたマルグリート様…
続いて、ミネットとコゼットも屋敷を後にした


今頃、カミーユさんとヘイリーは新しい土地で幸せに暮らしているんだろうか?


素敵な結婚式だったみたいだしね?


…というのも実は、結婚式の事はよく覚えてないんだ
シャンパンを呑んだ辺りまでは記憶があるんだけれど…


目が覚めた時は、なぜかスヴェンさんの部屋にいて
なんだかわからないけれど、体中が痣だらけだし

いったい、何してたんだろう…?



まぁ…いいや

シャンパンを呑んだくらいで酔っ払って記憶をとばしたなんて
そんな恥ずかしい事は忘れてしまいたいしね…



ただ…おぼろげに覚えているのは

険しい顔のマックス様と
声を荒立てるスヴェンさんの姿

そんな二人を見たのはエグレッタ・サクラに来てから2回目だ…
ドイツにいた頃は、そんな事一度もなかったのに



夢……だったのかなぁ?





マルグリート様が去って
エグレッタ・サクラの主はマックス様に代わられた。



あの人のもとへは戻らないのですね…


はぁ…
この気持ちも、酔っ払らった時の様に
きれいに忘れることが出来たら 少しは楽になれるのに…


By 近侍・ハリー | Time : 16:54 | CM : 0 | TB : 0
2009.09.23 Wednesday


結婚式に向けて・・
また、アレの練習が始まってうんざりだよ


何って?
アレだよ、アレ!
エグレッタ・タンゴ!


このエグレッタ・サクラでは、祝い事や葬式・・
とにかく、屋敷の節目にはタンゴを踊るんだってさ

あの、陰険執事が

『エグレッタの使用人たるもの、この伝統的なタンゴを踊れなくては屋敷の沽券に関わります』

とか言って張り切ってるものだから


一段と、うんざりするよ・・


しかも相手役は小煩いコゼット
これもやる気が出ない原因かもね?


別に、ダンスは嫌いじゃない
嫌いなのは、あの陰険執事


スヴェンさんの方が
あいつよりダンスの教え方は上手だったよ


ずっと昔、皆で過ごしたクリスマス―


あの人と踊ったダンスが忘れられない



ステップを踏む度に
白いドレスがフワフワと揺れて


このまま、時が止まってくれたらって
何度思ったことか・・


そして・・
マックス様と踊るあの人の姿―


マックス様の腕の中で幸せな笑顔を見せるあの人は・・
本当に本当に綺麗で・・・


・・・・・・



何を考えてるんだよ
そんな事、ある筈がないじゃないか・・
見えない不安
そんなものに怯えるなんて馬鹿らしい!


マックス様は僕の神様・・・・


一瞬でも神を疑うなんて、最近の僕はどうかしてる
By 近侍・ハリー | Time : 13:29 | CM : 0 | TB : 0
2009.09.06 Sunday


フン・・・くだらない


結婚式、結婚式って浮かれすぎだよ

そんなに結婚式ってイイものかねぇ?


あんなの、ただの自己満足だろ



皆、結婚式がゴールだと勘違いしてんじゃないの?


結婚式は結婚生活のスタートだって
本当にわかってるんだか・・

まあ、ここには当分結婚できそうもない女達が
うようよしてるからね


そう考えると
あの、ヘイリーへのあからさまな祝福は
嫉妬心のあらわれでもあるのかな


女って本当、怖いよね



そう考えると、あの人は―


純粋で清らかで
どこまでも無色透明な水のよう



なのに―


その澄んだ水に
真っ黒なインクが一滴落とされた




ああ・・・
考えるのはやめよう

これ以上、考えたって答えは出ない


今は・・・
低能な女達の水面下の争いと
それを取り巻く人間たちの奇妙な世界を
高みの見物と洒落込もうか
By 近侍・ハリー | Time : 13:10 | CM : 0 | TB : 0

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