2010.03.02 Tuesday


先日、しばらく姿を見せなかったリュシアンさんがついに動きだした。

みんなの期待とは裏腹に、エグレッタを去るという決断をきめたようで・・・。

マクシミリアン様は、どうしてリュシアンさんの申し出を了承したんだろう?

リュシアンさんは、何世代も前からの、館付きの執事だと聞いていたのに・・・。

僕はまだ・・・、信じられないや。


リュシアンさんの旅立ちの日は、もうすぐらしい。

まだまだ沢山仕事を教えてもらいたいし、今までのお礼も伝えたいのに・・・

けれど、以前と変わってしまったあの人に、

僕はなんと声をかければいいのか、答えはみつからないまま。


それと同じ頃、

マクシミリアン様の妹君、シャルロッテ様をお迎えする準備が始まった。

どこから聞いてきたのかわからないけれど、みんな

「シャルロッテ様は可愛らしい少女らしい」とか、

かと思えば別のところでは「マクシミリアン様と似ているらしい」だなんて・・・。

ずいぶん盛り上がっているみたい。


みんな、まだ見ぬ新たな住人に期待を膨らませて、

結婚式の時とまではいかないけれど、館の雰囲気もだいぶ明るくなった。


・・・そんな中、静かに独り去っていくリュシアンさん。

僕は、その背中をただ見つめるしかなかったんだ・・・。
By 近侍・ニコラ | Time : 00:49 | CM : 0 | TB : 0
2010.01.30 Saturday


ハァー・・・
ハァー・・・。

かじかむ指先に息をかける。


「今日も寒いなぁ・・・。」


そうつぶやきながら食器室に入り、シルバーを磨く。

ハリーには、今日は時間になったら手伝いに来てね!

って言っておいたのに・・・もぉ・・・。

怒る人がいなければ、すぐどこかへいっちゃうんだ。

今は、リュシアンさんがいないから・・・。

マクシミリアン様も、ハリーにはどこか甘いしなぁ・・・。


・・・シルバー磨き、僕は嫌いじゃない。

一つ一つ丁寧に磨き上げていくこの時間で

いろいろな考え事ができるからね。


今日の仕事の反省と、明日の準備のこと。

次はどの本を読もうか?

前のご主人様は元気にしているだろうか?

僕はあとどのくらいで一人前になれるのか・・・?


・・・まぁ、本当ににいろいろな事が頭をめぐるんだ


でも
今はどんどんエスカレートする、あのピンクの庭をどうするか・・・

そればっかり考えている。


日に日に薔薇が増えているような気がするし、

苗や肥料の納品書が毎日のように届く・・・。

・・・はぁ・・・。



最後のシルバーを、ため息と一緒に引き出しにしまう。

もう一度アレクさんにお願いしてみようかな。



でも。・・・はぁ・・・。


しまった はずのため息がまた漏れてしまった。
By 近侍・ニコラ | Time : 04:17 | CM : 0 | TB : 0
2010.01.23 Saturday


フワリ・・・と漂うチョコレートの残り香。

ああ、とってもいいにおいだなぁ。

マクシミリアン様の呼んでくださったヌーベル・キュイジーヌの

パティシエのアリーヌさん、また来てくれるといいな。


そういえば、アリーヌさんのスイーツが振舞われてから、

なんだか仕事がスムーズに運ぶようになったような・・・?


特にエリーズさんなんてニコニコして僕の仕事まで

お手伝いしてくれるし・・・アレクとの諍いも減ったみたい。


疲れたときには甘いもの、って言うし!

甘いもののパワーって、凄いなぁ!


セルジュとリュシアンさんみたいに、逆に働いてしまう

パターンもあるみたいだけれど・・・まあ、それは例外だよね・・・??


こんなに美味しいスイーツやお料理が出される

リリィ・テイラーのパーティーって、一体どんなものなんだろう・・・?

きっときらびやかな所なんだろうなぁ・・・。
 
 
 
By 近侍・ニコラ | Time : 16:35 | CM : 0 | TB : 0
2010.01.02 Saturday


先日、早起きして館の見回りをしていた時の事。

廊下でアレクさんに会いました。


「おはようございます!!」と声をかけると、

いつもの作業着を両手でちょこっとつまんで、クルンっとまわり、

「ああニコラっ、ごきげんようでし〜♪」

とおかしな挨拶をされました。


恐る恐る、何かあったんですか?と尋ねると、

物凄い勢いで喋る喋る!

もう何を喋っているのか分からないくらいのスピードで・・・。


「あちし、今度パーティーに行くんでしよ〜!!
 マックス様とっ!!!・・・しかもでしね♪
 いつ、どこで行われるパーティーか想像がつくでしかっ?!
 なんと、あの、あのリリィ・テイラーのパーティーなんでしよっ!!
 しかもしかもしかも!
 2月14日!バレンタインなんでしよ〜〜〜!!!
 リリィのオシャレなドレスを着て♪
 マックス様に優しくエスコートされるなんて〜〜〜!!キャッ♪
 だから、あちし嬉しくて嬉しくて、徹夜でこの庭を改良したんでし〜!!
 見てくれでし、あちしの心情を表現した、素晴らしく美しい庭を!!!」


そういわれて、ハッとする。

朝日とともに現れる美しい蒼・・い・・・。

・・・え?

ピ、ピンク?!

急いで中庭まで出てみると、

蒼色で統一されていたはずの庭のバラが、一つ残らず、全てピンク色に!!

エグレッタの蒼いバラが・・・。

エグレッタの・・・。


「あ、アレクさん、困りますっ!!すぐに直して下さい!!

蒼いバラはエグレッタの象徴なんですよ!」


「フンっ!

代々エグレッタで蒼いバラを育ててきたけれど、

ピンク色のバラを育ててはいけないとは言われてないでしっ!!

さてっ、あちしはこれからマックス様と パーティーで催されるダンスの練習でし!

あぁ〜、マックス様〜。今行くでしよ〜♪」


「ちょ、ちょっと、アレクさん!!!!」


あの日から、アレクさんは毎日「マックス様〜」と叫びながら歩いている。

ピンクのバラはいつになったら元に戻るのか・・・。

今のボクでは彼女の暴走を止められそうにありません。

どうか、何事もありませんように・・・。
By 近侍・ニコラ | Time : 02:30 | CM : 0 | TB : 0
2009.11.03 Tuesday



朝の見回りも終わったし、

次は朝礼の準備と配達物の仕分けか…。

でも、その前にいろいろ確認したい事もあるし、

リュシアンさんの執務室へ行かないと。



それにしても、リュシアンさんは毎日こんな沢山の仕事をこなしていたなんて…。

ここ数日、リュシアンさんの代わりを頑張って務めてきたのだけれど、

僕ではどうも上手くいかない。

いろんな人からいろんな事を質問されるけれど、

毎回、「すぐ調べて後で連絡します」と言うしかなくて。

プロと見習いの差を痛感させられました。


そうそう、先日アレクさんには

「まぁ〜ったく、そんな事も把握してないでしか?!
 見習いだからといって、甘ったれてもらっていては困るでしっ!!
 さっさとあの陰険執事に聞いてこいでしっ!!!」

と怒られてしまったしね。

僕はもっともっと頑張らないといけない…




寒い廊下を通り抜け、執務室のドアをノックする。

トントンッ・・・。
「リュシアンさん、ニコラです。」

あの日以来、中からの返事はない。


今日こそ元気になって下さい…と祈りながら、

僕は重い扉を押し開けた。
By 近侍・ニコラ | Time : 16:46 | CM : 0 | TB : 0
2009.10.25 Sunday


ようやく静けさを取り戻したエグレッタ・サクラ。

でも、まだ平穏を取り戻していない人々も―





マルグリート様たちが旅立たれる日の朝、

僕はミネットに会った。

いつもと同じ、少し無愛想なミネット。

いつものようにたわいない、

そして、続かない会話をした。



いつもと違ったのは、

何か言いたそうな顔をして黙り込む彼女。

僕は彼女が話し出すのを待ってみることにしてみた。


・・・・・・・・・・・・・・・・。


長い沈黙の間、僕はあの日を思い出していたんだ。


廊下でミネットとぶつかって、

書類を一面にばら撒いてしまったあの日を。

ミネットはもう忘れてしまっているかな・・・。


そんな事を考えていると、なんだか寂しくなって、

たまらず先に言葉を発してしまった。

「今までありがとう」


すると


「ニコラも、ありがとう


 ――――元気でね。」


かすかに微笑んでミネットは去っていった。




でも、別れの余韻に浸る暇もなく仕事は押し寄せてくる


さあ、まずは執務室に閉じこもりっきりの
リュシアンさんをなんとかしなきゃ!
 
By 近侍・ニコラ | Time : 06:40 | CM : 0 | TB : 0
2009.09.15 Tuesday


今日は結婚式でお客様にお出しする、

乾杯用のシャンパンと食事用のワインの選定に立ち合わせて頂いた。

薄暗く、少し肌寒く感じる貯蔵庫は、なんだかちょっと怖かった。



まずはシャンパンから選定が始まる。

僕はてっきり5、6種類の中から選ぶのだと思い込んでいたのだけれど、

出された種類は30種類を遥かに越えていた。

グラスもさまざまな形が用意されていた。

グラスの深さや口の広さで、香りや味が変わってくるのだとか。

パーティーの雰囲気や、その後に出される食事、

また、主人や来賓の方の好みを踏まえて選ぶこの作業は、

砂漠に落とした一本の針を見つけるように難しい。

自分の勉強不足を痛感し、僕にはきっとソムリエは無理だな〜

なんて思っている間に試飲が始まった。

ビンのコルクを抜いて、グラスにシャンパンが注がれると、

なんともいえないいい香りがした。

薄暗いこの場所でも、気泡がキラキラそこから浮かんでくる。

ちゃっかり僕も一口。

・・・・。

うん、僕はまだジュースで十分かな。。。
By 近侍・ニコラ | Time : 04:11 | CM : 0 | TB : 0
2009.09.03 Thursday


何だか、最近、エグレッタ・サクラの雰囲気がおかしい。
もちろんカミーユさんとヘイリーさんの結婚式に向けて、
いろいろと忙しくなってきている事もあるのだけれど・・・。

僕がこの館にやってきた時は、
ゴシック調の館に、こう、なんだか空気がずっしりと重く、
妖艶で不思議と引き込まれるような感じがしていた。


最近のエグレッタといえば・・・。

マルグリート様は毎晩夜会と言う名のデートへお出かけになり、
マクシミリアン様は秘書のパトリシアさんと仕事の話だといっては
二人で自室にこもってばかり。

リュシアンさんはカミーユさんを叱っていたかと思うと、
突然のため息。
僕に仕事の指示を出したかと思うと、
すぐにフラフラとどこかへ消えてしまう始末。

女性陣はといえば、もう結婚式の話でお祭り騒ぎ。

いつも通りなのは、
クローディアさんとスヴェンさんだけかな。
あぁ!あとミネットも。
まぁ〜、彼女の場合はいつも無表情なだけなんだけどね・・・。



漆黒の館
それを取り囲むように咲き誇る青い薔薇

エグレッタを彩る美しいものは何ひとつ変わっていないのに

以前と同じに見えないのは
みんなの気持ちがバラバラなせいなのかな?


結婚式が終わるまでは、
事件が起こりませんようにと祈るばかり・・・。
By 近侍・ニコラ | Time : 01:14 | CM : 0 | TB : 0
2009.08.23 Sunday


先日ヴェルニエ伯爵のいいつけで、マルグリート様のご予定を伺いに行きました。



―――コンコンッ―――


マルグリート様の部屋の扉をノックしたが、しばらくしても返答がない。。。
今日も予定よりも早く外出されたのだろうか?
諦めかけて戻ろうとした時、そっとドアの奥から冷たい表情のミネットが現れた。
僕が用件を伝えようと口を開いた瞬間に、無言で中へ案内された。

マルグリート様は窓際の椅子に腰掛け、
窓の外、ずっと遠くを見つめていらした。



失礼致します、ニコラです。
先ほどヴェルニエ伯爵様から、
マルグリート様の今後のご予定を伺うってくるようにとおおせつけられまして、
少々お時間を頂きたいのですが、よろしいでしょうか?



  あら、ごきげんよう、ニコラ。
  ニコラがわたくしの所へ来るなんて珍しいと思ったら、
  お父様からのいいつけだったのね。
  わたくし、今度はニコラが誰かと結婚したいだなんて言い出すのかと思ったわ。
  ふふふふ。




マルグリート様が僕にご冗談を言われるとは思いもよらず、
僕はあっけにとられ一瞬かたまってしまった。
そんな僕を見て、またマルグリート様がクスクス笑う。
初めて見るマルグリート様の優しく幸せそうな表情に、僕も少し嬉しくなった。


予定を伺うと、
昼間はカミーユさんとヘイリーさんの結婚式の衣装やアクセサリーを選びに行かれるそうで、
夜はいつものようにパーティーへ出かけるそうです。
しかし、気になる点が。
マルグリート様お一人でお出かけになる頻度が前よりもぐっと多くなっている事。
そして、特定のとある男性とのお約束が数回・・・。


ふと、マクシミリアン様は・・・と思ってしまった。
僕はただの使用人のうちの一人。
そんな事を考えてはいけないのに・・・。
By 近侍・ニコラ | Time : 20:13 | CM : 0 | TB : 0
2009.08.06 Thursday


ヴェルニエ伯爵がエグレッタにお越しになってから、
僕は毎日緊張の連続です。
リュシアンさんとヴェルニエ伯爵のお世話係りをしているのですが、
なかなか上手くいかなくて。

仕事は前日に確認し、一つひとつ丁寧にこなしてはいるものの、
ヴェルニエ伯爵を目の前にすると、やっぱり緊張してしまって・・・。
かたくなりすぎているようです。

そんな僕を見るに見かねたヴェルニエ伯爵は

「ニコラ、そんなに緊張しなくたっていいんだよ。
 誰だって、最初は失敗するものさ。
 僕でしっかり練習して、次に成功させればいいんだよ。」

と優しく微笑んでくれました。

次こそ、きちんとお世話係りの役目を果たせるように頑張ります。




そういえば、最近リュシアンさんが小さなミスをするようになったんです。
ファイルや時計を忘れてきたり、紅茶の銘柄を間違えたり・・・。
完璧主義者であるリュシアンさんが、一体どうしたんだろう?


エグレッタの館は特に忙しいというわけでもないし、
使用人達もそれぞれの持ち場できちんと仕事をしている。
ヴェルニエ伯爵の影響か、館の雰囲気がとてもやわらかくなり、
働きやすくなったとさえ思えるのに。
僕にはリュシアンさんがミスをする原因が思いつかないよ。


もしかして?!僕の緊張が伝染してしまっているのかな?
明日こそは、落ち着いて。
リュシアンさんに迷惑をかけないように、もう一度仕事の確認を!
By 近侍・ニコラ | Time : 10:25 | CM : 0 | TB : 0

CATEGORYS

Name :