2011.12.16 Friday
 

黒く重厚な部屋の扉を乱雑に押しやり、響く足音も気にせず窓際まで辿り着く

激しく投げ捨てられた銀色の仮面と、そこから取れ落ちた宝石を拾い上げながら
スヴェンもその後ろに控えた



「Warum es muss so ein Ende nehmen!」
(こんなはずでは無かった!)



カーテンを握りしめ、感情の高ぶるまま母国語で怒鳴る


――――――母の事を… 過去を知っている人物

――――――リュシアンの利用価値

――――――亡霊からの手紙


そして




――――――奪われたシャルロッテ



「Damit ich Sie bewahre; schon…Es gibt nur diese Methode.」
(僕があの子を救うには、もう…この方法しかないというのに)



どんな事があっても、必ず守ると約束した

今は亡き母上との誓いも

脆く、崩れ去ろうとしている





自らその手に堕ちると宣言したシャルロッテ

何故… なんの為に……

お前が選んだ道ならば、それがお前の幸せなのだろうか…





いや……





一度視線を落としてから、後方に控えていたスヴェンを一瞥し
革張りの椅子に深く座る

その視線の意味を瞬時に察したスヴェンは
一度だけ頷き、音も無く部屋を出て行った




まずは調べなければ

あの男の

仮面に隠されていた笑顔の真意を

目的と……、憎悪を




「ロンズデール……ッ」









このゲームで払う代償は大きそうだが

僕は貴方に



「Ich werde ermordet und stelle es nicht auf.」
(殺されてなどやらない)
By マクシミリアン | Time : 00:19 | CM : 0 | TB : 0
2011.11.28 Monday


幾重にも重なる重厚な扉と
鍵で覆われた部屋の隅


「シャルロッテ…」


白い羽毛のタオルケットとクッションに埋もれ
隠れる様に眠る少女


その頬には涙の跡が


「また、隠れんぼかい…?」


拗ねると行われるこの隠れんぼは、既に恒例で
毎度家政婦を慌てさせる


「まったく」


シャルロッテを探している間に消えていった商談を思い
軽い溜め息を吐いた




先日、シャルロッテに見られた過去の報告書

すぐ見つかるような場所には、置いてなかったはずなのだが

何故……




涙の跡を指で拭い
その幼い身体を抱き上げた




「おやすみ、シャルロッテ」




――――――せめて、お前だけは




「良い夢を」













目を覚ますまで

今日は傍に居るよ


By マクシミリアン | Time : 02:25 | CM : 0 | TB : 0
2011.11.16 Wednesday
 

パーティーへの参加者リストに目を通しながら
やはりそこに、あの老いた狸の名前が無い事を確認する


「あの男が、見逃すはずは無いのだが……」


思考を巡らすも、出口の多すぎる迷路しか今は見えなくて


「……まぁいい」


再度リストを眺め、その仰々しい名前の羅列に吐き気を催す

取引の為の手回しとはいえ、鬱陶しい…




――――――爵位なんて枷でしかない




自らに重々しく着いていたそれは
とうの昔に捨てやった




――――――エフェンベルク伯爵家



「私で終わらせる、必ず…」



――――――後世に残す事無く消えるべき呪われた一族





私の想いも、あの子の記憶も






「全ての罪と共に」










呟いて

軽くなったはずの両手首を見つめた

By マクシミリアン | Time : 16:30 | CM : 0 | TB : 0
2011.11.02 Wednesday


窓際にかかる重厚なカーテンを押し開いて、霞がかった庭を眺める

まるで、その存在を隠すかの様に
今日も闇に溶け込もうとするこの館、エグレッタ・サクラ

暗い庭先を眺めながら、先日まで滞在していた
パピヨンのあの眩しい輝きを思い出す


――― 可愛らしい王子に、純白の姫君

――― 幼い喪失の記憶


僕は誰の名を、呼べるというのか……



「………」



ノックも無いまま、低い音を立てて開いたドアを振り返り

カーテンを閉じた




――― あの無邪気さも、綺麗な涙も



「……おいで」



――― 僕にはもう









「シャルロッテ……」














 思い出せない事
By マクシミリアン | Time : 01:01 | CM : 0 | TB : 0
2011.02.11 Friday

蝶の刻印が施された封筒を、黒光りする机に投げる

パピヨンからの招待状

華やかな光と、優しい温もりに溢れたあの姉弟の
輝く様な姿を思い出した
特に今、渦中に居るであろう悲しみの姫君のことを

同時に、フラッシュバックする記憶の中の少女


「因果、かな…」


 あまりにも似過ぎている2人の少女

強烈な光の中で、思い出される記憶に頭痛がした

応接用の椅子にだらしなく倒れ込みながら、シャツのボタンを一つ外し
ベルでスヴェンを呼びつける


「出発の準備をしろ」


あの少女に生き写しの様な姫君を
今度こそは救えと、用意された因果

解っている
これは酔狂な遊びで、ほんの寄り道
女性には、常に笑っていて欲しいと願う
偽善者な僕のフェミニズム


「リーネ……君は今、幸せかい?」






記憶の中の少女は

ただの一度も










僕を見ないのだけど

By マクシミリアン | Time : 19:13 | CM : 0 | TB : 0
2010.03.14 Sunday


黒光りする机の前
革製の椅子に凭れかかる僕の顔色を伺いながら
ハリーが口を開いた


「僕がですか?」

「そうだよ、ハリー」


信じられない―――というように、
後ろに控えるスヴェンの顔色まで伺っている


「ドイツまで戻り、あの子を―――」


輝くハリーの瞳に、優しい笑顔で返しながら





「―――ここへ」





何も知らず、ただ純粋にあの子を慕うハリー

綺麗なお前が、綺麗なあの子を連れて来てくれ


「すぐに身支度をしてきます!」と、慌てて部屋を出ていこうとするが
思い出したかの様にペコリと御辞儀だけして、駆ける足音が遠ざかる


「懐かしいな‥‥」


光の溢れる中庭で、
ハリーとシャルロッテが仲良く戯れている光景を思い出し、小さく笑う

しかし次の瞬間、同時に駆け抜ける忌々しい記憶




カツン、という靴音と共に一歩前へ出たスヴェンを見遣り

うつむいて再び笑った
By マクシミリアン | Time : 16:13 | CM : 0 | TB : 0
2010.02.15 Monday


「Ihre Worte sind eine t dliche Dosis Gift.」
(お前の言葉は、致死量の毒のようだ)

シャルロッテを招く準備を滞りなく行いながらも
未だ難色を示してくるスヴェンに、笑いながらドイツ語で漏らす


もう遅いのだよ
リリィにも先日のパーティで、新しいドレスを依頼してきてしまったしね

リリィのバレンタインレセプション
洒落た店内装飾と雰囲気‥‥
来賓が召していたドレスは、どれも素晴らしいものだった
きっとシャルロッテに用意されるドレスも、素晴らしいものなんだろうね

それに、パーティで見つけた、小さいナイトつきの輝く姫君‥‥

なんて面白そうな‥‥‥


上機嫌に笑う僕を見兼ねて、スヴェンが一つ、態とらしい咳払いをした


分かっているさ、もう準備は佳境だ

この館で、欲しい駒は全て手に入れた

僕という犠牲の上で、あの子を幸せにする為の‥‥‥


「Ein Sturm kommt. Eisen und Blut von dem Sturm.」
(嵐が来る、鉄と血の嵐だ)


存分に両手を広げ、笑って迎えよう










――――――――最悪を

By マクシミリアン | Time : 00:56 | CM : 0 | TB : 0
2010.02.01 Monday


色鮮やかな桃色に彩られた庭園
いくら眩しく花が咲き誇ろうとも、重苦しい館と曇り空の中で
その庭園は不気味な雰囲気を更に異様なものへと演出していた


「これはまた、‥‥凄いな」


いつもは青い薔薇の庭園も
庭師の少女の心情一つでどうにでも変わる

あまりの異質さを嘆いて、使用人からのクレームが多発中だと
スヴェンがこぼしてはいたのだが―――


「フフ‥‥やってくれるねぇ、アレク」


庭へ出て、少女を探す
土いじりをしている、桃色の頭が見えた


「あぁ、アレク 探したよ」


今日も土を顔につけ、屈託無く笑う少女


「薔薇が、君と同じ桃色だから、なかなか見付けられなかったよ」


悪気も無いから


「この色もいいけど、やっぱり薔薇は青がいいなぁ」


優しく諭す





「君をすぐ、見付けられる様に‥‥ね」





微笑んで、桃色の薔薇を撫でた
By マクシミリアン | Time : 17:34 | CM : 0 | TB : 0
2010.01.22 Friday


「有難う、アリーヌ」

甘いスイーツの香りがする可愛らしい少女
照れながらお辞儀をする様子も可愛いいが、その腕前は一級品

彼女が作った作品に、きっと皆も喜ぶだろう

もしかしたら、閉じ籠もっている困った執事も
この甘い香りに釣られて出てくるかも知れない


「フフ‥‥」


小さく笑いながら自室に戻り、甘い香りを遮るかのように扉を閉める



「らしくない、僕からの善意だよ」








全ては、裏でスヴェンが動きやすい様に…ね
By マクシミリアン | Time : 08:43 | CM : 0 | TB : 0
2010.01.13 Wednesday


自室にて、窓際に立ち庭を見下ろす

先程のスヴェンからの報告で
リリィ・テイラーがアレクの採寸に来ている事が分かった


―――ドレスのデザインをするなんて、いつ以来だろう


「この僕が、シャルロッテ以外の娘の為に
 ドレスを用意するなんてね…」


リリィに渡した物と同じデザイン画を手にとり
シャルロッテを想う


「きっと、似合うよ‥‥」


結局、全てはあの子の為に描いてる自分に気付き






画を握りしめながら嘲笑った
By マクシミリアン | Time : 08:36 | CM : 0 | TB : 0

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